監督・脚本|アダム・グジンスキ
マックス・ヤスチシェンプスキ ウルシュラ・グラボフスカ ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ
撮影|アダム・シコラ 音楽|ミハウ・ヤツァシェク 録音|ミハウ・コステルキェビッチ 衣装|ドロタ・ロケプロ 美術|グジェゴジュ・ピョントコフスキ 編集|マチェイ・パヴリンスキ
制作|マグダレナ・マリシュ プロデューサー|ウカッシュ・ジェンチョウ、ピョトル・ジェンチョウ
原題:Wspomnienie lata/2016年/ポーランド/83分/カラー/DCP
提供:グランマーブル 配給:マグネタイズ 配給協力:コピアポア・フィルム
© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź -Miasto Kultury w Łodzi
それは、ぼくが子どもでいられた最後の夏だった
甘酸っぱく、どこかなつかしい、新しい夏休み映画が誕生した
1970年代末―夏、ポーランドの小さな町で、12歳のピョトレックは新学期までの休みを母ヴィシャと過ごしている。父は外国へ出稼ぎ中。母と大の仲良しのピョトレックは、母とふたりきりの時間を存分に楽しんでいた。だがやがて母はピョトレックを家に残し毎晩出かけるようになり、ふたりの間に不穏な空気が漂い始める。一方ピョトレックは、都会からやってきた少女マイカに好意を抱くが、彼女は、町の不良青年に夢中になる。それぞれの関係に失望しながらも、自分ではどうすることもできないピョトレック。そんななか、大好きな父が帰ってくるが……。
子どもと大人の狭間で揺れる12歳の少年の目を通して描かれる、切なくも忘れられない一夏の記憶。どこかなつかしさを感じさせる70年代ポーランドの風景のなか紡がれる、新しい夏休み映画が誕生した。
映画大国ポーランドから生まれた新たな才能
端正な映像が捉えた、誰もが体験する思春期の輝きと揺らぎ
アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキー、イエジー・スコリモフスキといった巨匠たちに続き、近年、パヴェウ・パヴリコフスキ(『イーダ』『COLD WAR あの歌、2つの心』)、アグニェシュカ・スモチンスカ(『ゆれる人魚』)と次々に実力派監督を生み出すポーランド映画界において、また新たな才能が日本に紹介される。デビュー短編『ヤクプ』(97)がカンヌで絶賛されたアダム・グジンスキ監督(1970〜)が自身の体験をもとにつくりだした『メモリーズ・オブ・サマー』は、母と子を結びつける特別な絆とその崩壊を軸に、初めての恋や友情、性を取り巻く感情に戸惑う思春期の痛々しさを、切実に映し出す。
自然に囲まれた小さな田舎町を捉えた端正な映像は、ノスタルジックでありながら、常に破綻の気配を漂わせる。撮影は、スコリモフスキの『アンナと過ごした4日間』『エッセンシャル・キリング』を手がけたアダム・シコラ。また「連帯」結成前、民主化運動が高まる直前の70年末ポーランドの風景を見事に再現した本作では、当時の音楽やファッション、インテリアが、見る者の目を楽しませてくれる。少年期特有の微妙な心の揺れを、美しくもサスペンスフルに描いた傑作!
1970年代末のポーランドの小さな田舎町、夏。
12歳の少年ピョトレックは母親のヴィシャとはじまったばかりの夏休みを過ごしていた。父イェジは外国へ出稼ぎ中だが、母と息子は、石切場の池で泳ぎまわり、家ではチェスをしたり、ときにはダンスをしたりする。ふたりの間には強い絆があり、ピョトレックは楽しく夏休みを過ごしていた。だがやがてヴィシャは毎晩のように家をあけはじめる。ピョトレックは、おしゃれをし、うきうきとした母の様子に、不安な何かを感じ始める。
団地に、都会からマイカという少女がやって来る。母に連れられ、おばあちゃんの家へ遊びに来たマイカは、田舎町が気に入らないようだ。仏頂面のマイカに、ピョトレックは一目で惹かれる。やがてふたりは徐々に仲良くなり、郊外へ一緒に出かけるようになる。
母は相変わらず出かけてばかりいる。月に一度、ふたりのもとに、外国で働いている父イェジから電話がかかってくる。喜んで話をするふたりだが、「ママに何か変わったことはないか?」という父の質問に、ピョトレックは沈黙する。その様子を見ていた母は、息子に「なぜあんな真似を」と怒りをぶつける。その日から、ふたりの間には緊迫した空気が流れ始める。そんななか、大好きな父が出稼ぎから帰って来る……。
敬称略・順不同
- 監督・脚本
アダム・グジンスキ Adam Guziński - 1970年、ポーランドのコニンに生まれ、14歳の頃、父親の仕事の都合で中央部のピョートルクフに移る。ウッチ映画大学でヴォイチェフ・イエジー・ハスの指導を受け、短篇「Pokuszenie」(96)を発表。続いて、父親のいない少年を主人公にした短編『ヤクプ Jakub』(98)がカンヌ国際映画祭学生映画部門で最優秀映画賞を受賞したほか、数々の映画祭で賞を受賞する。本作は、2007年に東京国立近代美術館フィルムセンター(現国立映画アーカイブ)で開催された「ポーランド短篇映画選 ウッチ映画大学の軌跡」でも上映された。短篇「Antichryst」(02)を手がけた後、2006年、初の長編映画となる「Chlopiec na galopujacym koniu」を発表。作家の男とその妻、7歳の息子の静かなドラマを描いたこのモノクロ映画は、カンヌ国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に正式出品された。『メモリーズ・オブ・サマー』はグジンスキ監督にとって長編2作目となる。
- 撮影
アダム・シコラ Adam Sikora - 1960年、ポーランドのミコウフに生まれる。ウッチ映画大学で撮影を専攻し、88年に卒業。その後撮影助手として働きながら、TVドラマの撮影監督などをつとめる。94年から長編映画も手がけるようになり、98年、マグダレナ・ワザルキェヴィチュ監督「Drugi Brzeg」の撮影が高い評価を得る。その他の撮影監督を手がけた作品に、イエジー・スコリモフスキ監督『アンナと過ごした4日間』(08)『エッセンシャル・キリング』(10)、レフ・マイェフスキ監督「Wojaczek」(99)「Angelus」(00)『ブリューゲルの動く絵』(11)、ミハリーナ・オルシャンスカ主演の『私、オルガ・ヘプナロヴァ』(16、ペトル・カズダ、トマーシュ・ヴァレンレプ監督)など多数。監督としても活躍しており、「Wydalony」(10)「Autsajder」(18)といった監督作がある。
- ピョトレック
マックス・ヤスチシェンプスキ Max Jastrzębski - 2002年、ポーランドのワルシャワに生まれる。ワルシャワの小学校に通っていたときにグジンスキ監督に見いだされた。本作が俳優デビュー作となる。ネティア・オフカメラ2017ライジングスター賞受賞。
- 母(ヴィシャ)
ウルシュラ・グラボフスカ Urszula Grabowska - 1976年、ポーランドのミシレニツェに生まれる。映画、テレビ、舞台で活躍する女優。ナチス占領下のポーランドで偶然ユダヤ人の子どもをかくまうことになった女性を演じた、フェリックス・フォーク監督「Joanna」(10)で、イーグル賞主演女優賞、モスクワ国際映画祭女優賞など、数々の映画賞を受賞する。その他の出演作にリシャルト・ブガイスキ監督「Uklad zamkniety」(13)などがある。
- 父(イェジ)
ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ Robert Więckiewicz - 1967年、ポーランドのノバ・ルダに生まれる。ウッチ映画大学出身。映画やテレビで多数活躍する俳優で、アグニェシュカ・ホランド監督『ソハの地下水道』(11)をはじめ、ポーランドのアカデミー賞と呼ばれるイーグル賞でたびたび男優賞にノミネート・受賞している。アンジェイ・ワイダの『ワレサ 連帯の男』(13)の演技でシカゴ国際映画祭最優秀男優賞を受賞。その他の主な出演作にユリウシュ・マフルスキ監督『ダ・ヴィンチ・プロジェクト』(04)、トマシュ・ヴィシュニェフスキ監督「Wszystko będzie dobrze」(07)などがある。
※上映時間および詳細は、各劇場にお問い合わせください。
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『メモリーズ・オブ・サマー』の前売鑑賞券を、1,400円(税込)にて発売中です。
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記憶に残したい傑作。少年は、母への愛、父との絆の間で引き裂かれる。瞳に幼い焦燥を宿しながら。少女の圧倒的な存在感、深緑の森と湖、水色の空――夏の光景はすべて、美しい残酷な予兆なのだ。
文月悠光 (詩人)
子供世界とは社会には一切所属していない完全に独立した惑星だ。
何光年も前にそこで起きた出来事の光のみが現在の我々に残像として投げかけてくる。
ヴィヴィアン佐藤 (美術家、ドラァグクイーン)
ひと夏の経験ーポーランド版、ひと味違います!
胸きゅんサスペンス(笑)必見です!
ホンマタカシ (写真家)
少年の心の揺れと隅々まで張りつめた緊張感、その向こうに広がるポーランドの景色の彩りに目を瞠 りました。
小林エリカ (作家・マンガ家)
大好きなお母さんのことが、急にわからなくなる。友達も、可愛い女の子も。不明=他者との摩擦で、自分の輪郭が、真夏の影のようにくっきり定まってく、特別な時間。
昆虫を捕まえる慎重な息遣いと手つきで映像に書かれた、そんな特別な夏の日記。何度も何度もまぶしくなった。
町山広美 (放送作家)
大切なリネンに染みが広がるように、寂しさと不安がピョトレックの心をじわじわと侵食していく。
1970年代ポーランドの明るくポップなインテリアやファッション、爽やかな夏の情景が少年のひりついた心を際立たせて胸が苦しくなりました。
miii (イラストレーター)
[ イラストもいただいております ]